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2012.01.24 (Tue)

特にお薦めはしない本だけど

 その家族は、父母と障害を持った長男と健康な長女と少し病弱は次男の5人家族であった。

 脳に障害を持って生まれた長男は癲癇の発作を時折起こすことがあるので、抗癲癇剤であるヒダントールという薬を服用している。

 次男が病院でさまざまな検査をしていてその検査が腎臓に及んだ時、父親が次男に対して、もし君の腎臓を摘出しなければならなく、家族の誰かから腎臓を移植しなければならないとしたときに君は誰のものを移植したいと思う?

 勿論そんな質問は、失礼で馬鹿げたことだろうが、病弱な家族にそのような質問をする、したいという気持ちは分からないでもない。

 すると次男は「長男はヒダントールを飲んでるからね」と答えた。

 飲んでるからね、の後には当然欲しくないと云う言葉が続くはずである。

 それを聞いた父親はむっとした。

 それを読んだ僕だって少しばかりむっとした。

 その父親は、あからさまに憤った気持ちを抑えながら次男に、長男の腎臓は悪くなっていると思うかね?と尋ねた、その真意は薬を服用して機能が劣っている臓器は欲しくないというのか、それはエゴイスティックではないのか、と云うことである。

 すると次男は、少し考えて、自分の云い方が父親に誤解を生じさせたことに恥じ入るように赤い顔になって、しかも落ち着いて彼はヒダントールを飲んでいる。それには有害な成分を含んでいると思う。だから彼には腎臓がふたつ必要なと思う。そのために彼から提供してもらうわけにはいかない。

 おそらく彼は、健常者も障害者も分け隔てなく接しよう、もし障害者を差別しようとする人間がいたら徹底的に抗議しようと思っていた人であって、ある程度そのような行動もしてきたに違いない。

 しかし次男の一言で、まさか自分の視野や考え方が偏っていて正しいものの見方ができていないと云うことに否応なく気づかされた。

 そんな本筋とは関係のない短いエピソードひとつが、この特にドラマティックでもなくアクションも手に汗握るような展開もないこの本に魅かれた理由である。

 自分の奢りを、そんな風に気づかせてくれた本が、大江健三郎著「新しい人よ眼ざめよ(講談社)」である。
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